イタリア旅行記第二回は 2 日目のローマ。
ローマの街に出てまず思ったのは「自動車が多い」ということだった。 すげーたくさん走ってるし、妙にスピードが速い。 東京よりもセカセカしてるような感じがする。 歩くほうも歩くほうで、信号がほとんど無視されている。 ここまで見事に無視されてると、信号をつける意味があるのか疑問である。 夜はやたら寂しい感じだったけど、朝になると印象がこんなに変わるんだなあ。
とりあえずテルミニ駅に行って荷物を預ける (預けようとする)。 しかし、セキュリティチェックのためにものすごい人数が並んでおり、 どうやら荷物を預けるだけで 1 時間かかりそうだ。 しょうがないので荷物を預けるのはあきらめることにした。
思えば、これがローマでの最悪の失敗であった。 1 時間かかろうがなんだろうが、 ここでスーツケースを預けるべきだったのだ。 ここでスーツケースを預けなかったために あとで地獄を見ることになる。
で、テルミニ駅を出発直後、いきなりスリに遭遇する。 『地球の歩きかた』に書いてあったのとまったく同じ手口で、 子供を抱いてダンボールを持った ジプシー親子が Help, Help と言いながら寄ってきた。 なんか壁際で囲まれて子供のほうが 財布のあるポケットにサッと手をのばしてきたので、 咄嗟に手を払って逃げた (弱)。危なかったー。
ローマと言えばローマの休日。 ローマの休日と言えばスペイン階段とイタリアンジェラートと真実の口でしょ。
ということでスペイン階段です。
▼スペイン階段
まあ、こんなもんだろう。 階段の上にある教会は修繕中だった。
で、今度はミサンガの押し売りにあった。 「ナカタ、ナカタ、サントス」とかなんとか 日本のサッカー選手を連呼しておいて注意を引いて、 うっかり手を握るとあっというまにミサンガを巻きつけられるらしい。 これも『地球の歩きかた』に書いてあった手口そのままだなあ。 ちょっとは進歩しろよ。
つーことでまたしても逃げる (弱)。 有名な観光地にはたいてい警官がいるので、 警官のほうへ逃げればさすがに寄ってこない。
ジェラートが食べたかったが、時間が早いせいか、 スペイン階段にはジェラート売りはいなかった。
スペイン階段からさらに北上してローマ市街の北の端、ポポロ広場に向かう。 距離はテルミニ 〜 スペイン階段の 1/3 くらいなのですぐ着いた。
▼ポポロ広場 (S.M.dei ミラーコリ教会と S.M.del ポポロ教会)
この広場はとにかくだだっぴろい。 写真は、ポポロ広場からローマ中心へ向かう方角に建っている二つの教会。 教会の間の道がローマのメインストリートっぽくて、 高級ブランドの店がたくさん並んでいる。 教会の逆側にはでっかい門がある。
広場の真ん中にはでっかいオベリスクがある……はずだが、 これも工事中で幌がかぶせてあり、でっかい広告がついていた。 激しく世俗っぽいな。
しかしデカい。何もかもがデカい。 スケール狂ってんじゃないのかコレ。
今度はさっきの教会の右を通り、テヴェレ側沿いに南下する。 するとすぐにアウグストゥス帝の廟に着いた。 つーか、本当にローマは遺跡だらけだ。犬も歩けば遺跡に当たるのだ。
▼アウグストゥス帝の廟
まるい。どうも他に言いようがない。 ようするにただの墓だしなあ。 小学生 (?) が社会科見学に来ていた。
そんなテキトーな感想を抱きつつ、さらに南下してパンテオンへ向かう。
▼アセンブラプログラミング?
これはアウグストゥス帝の廟の近くに張ってあった広告。 これはアセンブラプログラミングと関係があるのだろうか。 でも、わりとローマ中に張ってあったので、 アセンブラ関係にしては目立ちすぎのような気がする。
まあそんなのはどうでもいいんです。 パンテオンへ行くよパンテオン。
▼なんかのデモ
また変なものに遭遇してしまった。 どうもここはイタリアの下院らしいんだけど、 そこでなんかのデモをやっていた。 なんのデモだかは知らない。
下院の横を抜けて細道をぐりぐりと歩いていたら、 あっさりパンテオンに着いた。 思えばこのへんは非常に順調であった。
▼パンテオン
デカい。本当にデカいよ。なんだこれは。 本体は後ろのドームみたいなやつで、 内部にはローマ時代の様々な神がまつってあるらしい。 pantheon の pan は「すべての」、theon が「神」なので、 「すべての神をまとめて祭った神殿」、ということだな。
ちなみに、そのあとの時代にヴィットーリオエマヌエーレ 2 世の墓とかも追加されている。 ローマの神々と同格とは偉そうだ。 ヴィットーリオエマヌエーレなんて、日本だと 「一番長い、変な人名」として受験生がみんな覚えてるくらいのものだが、 イタリアではけっこういろんなところでヴィットーリオエマヌエーレの名前を見掛けた。
▼パンテオンにいた馬車
馬車もいます。ローマにはいろんなところに馬車がいた。 ついでにフィレンツェにもいた。 ヴェネツィアにはさすがにいなかった。
パンテオン前の広場にはカフェがいくつかあったので、 ここで昼を食べようかとも思ったのだが、 なんか高そうなのと、頼みかたがわからなかったのであきらめた。 いまなら平然と入れそうだが、このときはまだイタリアで 店に入ったことがなかったので後込みしてしまったのである。 でも、結局ここで店に入らなかったおかげでしばらく飢えることになる。
つーわけで、飢えた。ていうか、喉がかわいて死にそうである。 この日のローマは温度が何度あったか知らないが、 とにかくすごい日差しで夏のようだったのだ。
しかも、この文章を読んでいる人はきっと忘れていると思うが、 この日はスーツケースを預けていないのである。 10kg くらいあるスーツケースをひきずって炎天下を歩くのはかなりキツイ。 しかもローマの街って、なんでか知らないが道路が石畳なので、 キャスターがほとんど役に立たないのだ。 おかげで、ほとんどの時間はスーツケースをちゃんと持ち上げて運ばなければならない。 荷物を預けなかったことを本当に後悔した (しかし真の地獄はこのあとやってくるんだが)。
とにかく何か飲まないと死ぬ。 どうにかこうにか小さな Bar (バール) を発見して、 なんかはさんだパン (今思い出すと、ベーコンとトマトとモッツァレラチーズをはさんだパニーニだろう) と水を買った。 このときは値札が出てなくて商品名がわからなかったので、 全部ジェスチャーで買った。人間、死ぬ気になればなんとか通じるものだ。
そういえば、イタリアでは「1」のジェスチャーが違うようである。 水を頼むときに「uno aqua」と言いながら人差し指を立てたら、 水が 2 本出てきた。隣のおじさんは親指を立てていたので、 このあとからは用心して親指を立てて uno と言うことにした。
しかしこのパン、食いづらいな。どう食っても具がこぼれるんだけど。 まわりの人はあんま困ってないようなのが不思議でたまらない。
Bar で食料にありつき、体力も微妙に回復したので、 引き続き南下してコロッセオを目指す。 デカい道をしばらく歩くと、ローマ市庁舎を中心とするローマ中心部にたどりついた。
▼ローマ市庁付近 (たぶん)
この写真はそのへん。高台になっている。 この階段がまたキツかった。
▼カンピドーリオの丘 (たぶん)
この写真はその高台の上の広場。 左右は両方美術館である。
カンピドーリオの丘を南に出ると、一面フォロ・ロマーナであった。
▼フォロ・ロマーナ
「Foro フォロ」ってのが「遺跡」のことらしいので、 フォロ・ロマーナってのはようするに (古代) ローマの遺跡のことだな。 ローマにはそこらじゅうに「フォロ・なんとか」というところがある。
▼フォロ・ロマーナ
で……このフォロ・ロマーナが地獄だった。 なにしろ足場が悪い。日陰がない。あまつさえ山。もうこれ山だよ山。 ここで完璧に全体力が消費されつくした。
▼フォロ・ロマーナ (マクセンティウス帝のバジリカ)
もうね……。デカいんだってば。 写真に撮るとなんでも小さく見えてしまうので、 このデカさは伝わらないのではなかろうか。 「ちょ、おま、デカすぎ www」とか言いたくなるほどのデカさである。
フォロ・ロマーナを抜けるといきなりコロッセオが出てくる。 お馴染みですねコロッセオ。
▼コロッセオ
もうダメだ……。 フォロ・ロマーナで体力を根刮ぎにされて、 コロッセオを見る元気がありません。
▼コロッセオ内部
それでも最後の気力をふりしぼって中に入る。 しかしこのコロッセオが本当に本当にトドメだった。 なんでこの高さで階段が 46 段しかないんだよ! 階段の 1 段が余裕で 50cm くらいあるじゃねえか。 ローマ人は化物かっ。
いやでも本当に、もうダメです。 コロッセオを出てからしばらくは座って放心してたんだけど、 なんか、前をよく見るとジェラート屋の屋台がいるわけです。 もう速攻でジェラート (全部入り) と水を買いました。
あー、これはうまいー。 ジェラートの「全部入り」ってのは、 バニラとチョコとストロベリーとレモンシャーベットと、 あと忘れたけどとにかく 5 種類くらい乗ったやつのことだ。
水も飲んでどうにかこうにか歩き始める気力が戻ってきたので、 うっかり行きすぎてしまった真実の口の教会 (サンタマリア・コスメディン教会) に行ってみることにする。ここからは道も多少 (本当に多少) マシになってきて、 少し歩きやすくなった。
▼サンタマリア・コスメディン教会
着いた〜。この檻みたいなのの中に真実の口がある。 なんつーか、ほとんど動物園の檻だなこれ。
▼ 真実の口
知らない人 at 真実の口。 手を入れて写真を撮るためにすんごい行列ができていて、 ものすごい萎えた。萎え萎えです。 なんかすげームカついてきたので、口には手を入れないで帰ってきた。
ちなみにあの口は下水道の蓋という説がある (イメージ破壊しまくり)。
もういいです真実の口なんて。 もっと南下してカラカラ浴場に行きます。
▼カラカラ浴場
カラカラ浴場です。さびれてるな。 コロッセオはあんなに賑わってたのに、カラカラ浴場のこの寂れっぷりはどうよ。 夕日が差してるのがさらに哀愁を誘います。
そういえば、カラカラ浴場の隣には陸上のトラックがあり、 「カラカラ浴場スタジアム」という名前がついている。 最初、うっかりそっちに入りそうになって、 警備員に「遺跡はあっちだ」と怒られた。
カラカラ浴場の内部に入ってみると、 ああ、なるほど、寂れるのもわかるなあって感じ。 なにしろ何もないからな! 床モザイクがちょっと残ってるだけ。
この時点で 16:00 くらい。 この日は 19:30 テルミニ発の電車に乗らなければいけないので、 そろそろテルミニに向かわないとやばい。 最後に、帰り道の途中にあるサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂に 寄っていくことにする。
▼San Giovanni in Laterano
この教会はコンスタンティヌス帝がローマ法王に寄進した神殿、らしい。 なんていうか、「コンスタンティヌス帝」とか知ってる名前が出てくると、 ミーハー野郎としてはつい寄らずにいられないのである。
それにしてもこの教会もバカみたいにデカいね。もう慣れたけど。
結局この日はテルミニ駅から北の端 (ポポロ広場) まで行って 南の端 (カラカラ浴場) まで南下してテルミニに戻ってきたわけで、 徒歩でローマ市街を大雑把に一周したことになる。 ローマは意外と小さいということがよくわかった。 スーツケースさえ持ってなければ徒歩でももっと軽快に回れそうである。 次は気を付けよう。
そういえば、テルミニ駅に行く途中に猫に会った。
▼ローマ猫
この他にコロッセオ猫とカラカラ子猫にも遭遇した。 観光客がエサをくれるので、観光地には猫がいるらしい。
うん、でもね、まあ猫なんてどうでもいいんですよ。
なにしろ迷ってる真最中ですから! (泣)
最後の最後に迷ったんですよ。メチャクチャ派手に。 しばらく行ったらテルミニ駅前のサンタマリアマッジョーレ大聖堂に着くはずなんだけど、 なんでローマ外壁に来るのかなーっ?! いやまあテルミニ駅も外壁沿いだけどさ、こんなに寂しいところじゃないよ。 しかも時間がすでに 18:30 をまわっているということは、 あと一時間で駅に戻って電車に乗らなかったらアウトじゃねえか。 やばい。これはちょっと本当にやばい。
後から調べると、どうもサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂を出るときに 道を一本間違えてたようだ。おかげでローマの東の端のほう、 テルミニからずっと南に行ってしまった。
このミスのおかげで 30 分以上ロスして、 テルミニについたときはもう 19:00 であった。
すげー迷子になったりもしたけれど、二日目もなんとか終わりましたー、 ……とか言えるといいんですが。まだ続きます。
テルミニ駅にて、なんとか夕食を食べようとしたのがよくなかった。 ピザ版マックみたいなファーストフード店でピザのバリューセットみたいなやつを頼んだら、
デカい。
日本で頼むデリバリーピザの L サイズ相当くらいのやつが出てきた。 そして席についた時点で、電車が出るまでの残り時間が 20 分。 なんだこのピンチは。呪われてるのか。
覚悟を決めて食う。死ぬ気で食う。 食いながら、「仏教には餓鬼地獄ってあるけど、何も食えないより、 限界を越えてまだ食わされる地獄のほうがきついんじゃないかー!」 などと思索をめぐらしてみる。めぐらすなそんなもん。
食い切った。L サイズのペプシを一気飲み。苦しくて泣ける。 もうポテト (L サイズ) まで食うのは無理なので、 これはビニール袋に入れて持ち帰ることにする。 残り 8 分、電車へダッシュだー!
……やっべ、検札機が切符に反応しないんですけど。 もしかしてこれって validation とかいうやつが必要なの? 残り 6 分。
[i] (information) で聞いてみる。 その切符で大丈夫だからそのまま乗れと言われる。 えー。なんで反応しないんだよー、と思ったが、 向きが決まっているようである。反対側を入れたら動いた。 よかった。
残り 2 分で搭乗。本気であせった。
……ちょ、なんで俺の席に他の人がいるの? (あとでわかったことだが、二等車の座席指定というのは実にイイカゲンで、 みんな自分の席番号なんか無視して座ってるのである。)
ローマからフィレンツェまでは EURO Star (エウロスター) の直通便で一本だ。 電車は順調に遅れて、20 分遅れの 2 時間半強で到着した (イタリアの電車は「フツー、遅れるもの」のようである)。
へー、ここがフィレンツェ S.M.N. (サンタマリアノヴェッラ) 駅か。 テルミニ駅よりずっと小さいな。 池袋の西武池袋線ホーム……よりはもうちょいデカいか。 まあいいや。ホテルに行こう。
……
……
はい迷った〜。 つうかこんな適当な地図でわかるかよっ! (怒) 道のつながりが本物の地図と全然違うじゃねえか! どうしてイタリアのホテルの地図はどれもこれもいいかげんなんだ!
何度も何度も地図を見直した結果、 またしても出発の時点で道を間違えていたことが判明した。 しかしこれはわたしの過失ではなく、 あくまでもホテルの地図がいいかげんすぎるからだと主張する。
ホテルの人は妙にトロくて、"I'd like to check in." て言っても 「ちょっと待て!」と言ってずっと何かやっている。 何をやってるんだろう。 あと、日本人だから英語わかんねーだろうと思っているのか、 めっちゃ発音がトロい。 あの、さすがにそこまで遅くなくても聞こえますから。
部屋番号は 70 番。70 だが、3F である。 3F というのはヨーロッパ式の 3F なので、日本で言う 4F である。 なぜ部屋番号が 40 → 70 → 71 なのか、激しく問い詰めたい。
部屋はまたしても狭い。いやまあそれはもういいんだけどさ。 バスタブもある。お湯も出る。そしてまたしてもビデがある。 エアコンもあったけど壊れてるらしくて動かない。
ああそしてまたしても夕食を買うのを忘れた。 テルミニで死にそうになりながらピザ食ったからいいんだけどさ、 なんか食いたいなあ。 そこでポテトを入れてきたことを思い出したので、 食ってみる。パサパサになっていて死ぬほどまずい。 駅で買ったコーラで流しこむと、むせて吐きそうだ。 水飲みてー。
『地球の歩きかた』によると、どうやらイタリアの水は飲めるらしい。 ちょっと飲んでみてしばらくたっても特に調子は悪くならないので、 ガブガブ飲んで風呂入って寝た。
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